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彼らはどこにいるんだ?


「どこにいるんだ?」


***


「やあ」

右手を挙げて食堂に入ってきたのは見知らぬ男だった。
茶色のジャケットに白い綿のパンツ。
右手には黒い鞄。

白い兎の…ぬいぐるみの頭を被っていて
背格好から男とは分かるが「見知らぬ男」といわざるをえない。

ただし。彼の職業はその身なりから一目瞭然だ。
彼は理髪師だ。
この町で白兎の頭を被ってる男は理髪師の一族だからだ。
因幡の白兎は鰐に毛皮を刈られたが
白兎男は客の頭髪を刈る。


白兎男は席につくとメニューも見ずに大声で僕に向かって注文した。

「ビールとナポリタン・スパゲッティをくれ!」

両切りの煙草を咥え火を点け煙を吐き出すと言った。

「麺は柔らかく茹でてくれ!アルデンテは嫌いなんだ。
 こしのゆるいうどんのようなスパゲッティが好きなんだ」


白兎男はグラスに注いだビールを一口飲んだ。
上着のポケットから革砥を出すと膝の上に置いた。
鞄から剃刀を出し革砥でを研ぎだした。

シューッ・シューッ・シューッ……

振り子が左右に振れるように一定のリズムで剃刀を研ぐ。
まるで。

「今オレは時間をつくってるんだよ」

とでも言い出しかねないリズムだった。

シューッ・シューッ・シューッ……


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* **


イタリアの物理学者エンリコ・フェルミ(1901〜1954/1938ノーベル賞)

【フェルミのパラドックス】
「宇宙年齢の長さと膨大な恒星の数から、宇宙には沢山の生命体が存在し、知的生命体も多数あると考えられるのに、なぜ地球に飛来した痕跡が無いのか」という「フェルミのパラドックス」を提示。
フェルミは「宇宙人は宇宙に広く存在しており、そのうちの数種は地球に到達しているべきだ」
と考察した。

1950年 フェルミは昼食をとりながら同僚との議論でこう言ったとされる。

「彼らはどこにいるんだ?」


* **


マコちゃんがビールを飲みながら3人の客にむかって言った。

「なあ。ヤツらはどこにいるんだよ?」

オリオン横丁の御稲荷さんの隣にある焼き鳥屋店内。

客の一人があきれて言った。
「宇宙人なんてどこにもいねえよ」

ちょっと聞けとマコちゃんは言うと話し始めた。

「400万年前に猿人、180万年前に原人、50万年前に旧人類のネアンデルター 
 ル人、そして20万年前にオレら現代人と同じ新人類…クロマニョン人だぜ。 
 この進化って本当かよ?
 オレが知ってる限りじゃよ。猿はずっと猿だぜ」

「うんうん。確かに猿はいつまでたってもパンツを穿かないよなあ」

「あのなあ。オマエはそんなにパンツを脱いでばっかじゃそのうち猿になるぞ!」

「でもよお。400万年もありゃあ猿人も人類にさ……」

「古代文明からはたったの5000年だぜ。人間だけ進歩のスピードが速すぎだろうよ。
 だからさ。猿と人類は違うんだって」

「そんだけ長い時間がありゃ猿だって一念発起で人類にだってならねえか」

「猿が何の一念発起だよ?」

「しっかり立ち上がろうと思ったんじゃないかな…」

「じゃあいいか。江戸時代の人間が今の人間を見りゃあ驚くだろ。
 江戸時代の猿は今の猿をみて驚くか?」

「はあ?」

「じゃあオマエは江戸時代の猿と今の猿の見分けがつくのか?
 つかねえだろ!」

「ちょっと待て待て。
 マコちゃんよお。
 人類の進化と宇宙人と何の関係があるんだよ?」

マコちゃんは煙草の煙を吐き出すと灰皿でもみ消した。
入り口の引き戸を開け赤提灯を消し、暖簾を外して引き戸を閉め鍵をかけた。

マコちゃんは声を低めて話し始めた。

「いいか。猿と人類は違う。
 人類は最初から…人類だったんだ。
 そして一部の人類は…実は地球にやってきた宇宙人なんだよ」

「・・・・・」

「エジプトのピラミッドなんて宇宙人の知恵を借りなきゃ出来ねえだろうよ」

「昔の人は力持ちだったんじゃねえか?」

「力の話じゃねえ、知恵の話だ!」

「・・・・・」

「ナスカの地上絵はどうだ……」

「マコちゃんが今着てるTシャツの犬の絵か?」


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「これはキース・ヘリングだ!
 ナスカの地上絵ってさ…空から見なきゃなんだか分からない絵だぜ。 
 宇宙人の仕業じゃなくってなんなんだよ」

「うーん。確かにアレは不思議だよな…」

「かぐや姫は月から来たってハッキリ書いてあるもんな。
 さるかに合戦はさ…おにぎりを持った蟹だぜ、エイリアンだろそりゃ」

「マコちゃん…本気で言ってんのか?」

「ギャハハ。さるかに合戦の蟹は違うだろ。
 でもよ。実際さあ、特殊能力を持った不思議な人間っているだろ。
 人間離れしたヤツ、人間業じゃないだろってことができるヤツ」

「・・・・・」

「連中はさ人間社会に紛れて暮らしてる宇宙人の子孫なんだよ」

「空海、織田信長…、乾隆帝、獅子心王(ライオンハート)リチャード……
 アマデウス・モーツァルト、アルベルト・アインシュタイン……」

「ほらな。思い浮かぶ連中がいるだろ…常人じゃないヤツらが」

「ヨハン・クライフ、ディエゴ・マラドーナ……、ジネディーヌ・ジダン」

「まっ、人間業じゃないよな…」

「ヨーダ、チューバッカ、ハン・ソロ」

「あれは実話じゃねえ!」

「裏の蕎麦屋の3兄弟」

「アイツらは奇妙で不思議だが特殊能力はねえ!」


* **


15世紀のフィレンツェ共和国のヴィンチに生まれたレオナルド。
彼は人類の内部を知るため人体解剖を行い詳細に書き込んだ図譜を作成した。

解剖台に裸で横たわった人類の男。
レオナルドは男の頭部に触れ呟いた。
「アリストテレスによると…
 人間の脳は3つの球根状の脳室に分かれる。
 第1脳室は“想像する”
 第2脳室は“考える”
 第3脳室は“記憶する”
 それは本当なのか……」

レオナルドは解剖台に横たわる男の頭部に鋸の刃先をそえた…。


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* **


16世紀の日本の僧雪舟。彼が82歳のときのことだ。
禅僧である雪舟が中国への憧憬から離れ日本人の美意識で日本の風景を描いた。

「天橋立図」

それは鳥瞰の構図で描かれていた。

雪舟ははるか頭上にかかる天の存在を感じていた。
そして天より地上を見おろす己の目を感じていた。
歩きながら己が頭頂の皮膚のシミが見えるようであった。

知恩院から天橋立へと巡り歩く。
沖合の冠島、沓島を見渡す。
周囲の山並みに目をやり両腕を左右に広げた。
目を瞑った。
大きく息を吸った。身体が膨らむのを感じた。
ゆっくり息をはいていった。身体が軽くなった。
船底のバラストを捨て喫水が上がる船のように身体が持ち上がった。

閉じたままの眼前に視界が開けた。
視線は知恩院を巡り天橋立を滑り上空へと飛翔した。
高く。高く。
遥か下…およそ三百八十間(約700メートル)の下方に拡がるのは
宮津湾と阿蘇海を南北に隔て横一文字にかかる砂州。
天より見降ろす天橋立の砂が陽を浴び輝いていた。

わずか三尺ほど下を飛ぶ鳶と目が合った…。


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***


マコちゃんは酒瓶棚に置いてあったラジカセを手に取りカウンターの上に置いた。

「ビートルズのさ。
 “サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド” だけどさ」

「ジャケットに写ってる福助が宇宙人なのか?」

「よく分かったな」

「やっぱり」

「あほう!そんなわけねえだろ」

「・・・・・」

「あのアルバムのラストの曲 “A Day in the Life” だけどさ…」

「ジョンがつくった曲だな」

「ああ。そこにポールが作ったパートを強引に繋げてるけどな」

「ジョンが宇宙人なのか?」

「奇妙な曲だと思わねえか?」


マコちゃんはラジカセの再生ボタンを押した。
“A Day in the Life” が始まった。

「うんうん。ここか!奇妙なのはここか!
 イントロのギターにかぶさるピアノにリバーブかけて…
 歌が入る前のギターの1拍目が裏から入るところか?
 ジョンは変拍子が好きだからなあ…」

「うるせえ。黙って最後まで聴けよ!」


***


ジョン・レノンは歌う。
『ランカシャー州ブラックバーンに4000個もの穴があいた。
 アルバート・ホールを埋め尽くすにはどれだけの穴が必要か分かったろう』


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冷たい風に揺れるランカシャーの広い草原。
風に揺れる緑の葉先は不規則なリズムで揺れる。
変拍子に揺れるランカシャーの牧草。
その揺れが無数の穴を取り囲む。
無数の穴はいつしか融合し1つの巨大な穴となる。

際限もなく黒く、無慈悲なほど暗い穴だ。
一人の少女が淵に座り穴を覗いた。
底は見えない。深さも分からない。
彼女が手を差し入れると肘から先が闇にとけ見えなくなった。


穴はどれほどの夜と闇をかき集めたのだろうか…。


ロイヤル・アルバート・ホールを埋め尽くした巨大な空洞。
ロンドン中部サウス・ケンジントンに開いた巨大な漆黒の空虚。
ロイヤル・アルバートの穴(ホール)だ。
音も啓示もない黒い闇。
少女は穴の淵で立ち止まると辺りをちらりと見渡した。
そこには誰もいないことを確認した。
少女の髪が揺れた。
ランカシャーの風がサウス・ケンジントンに吹き渡った。
少女は穴の中へ向かって声を投げた。


「どこにいるの?」


ゆらりと闇が動いた。
硯の中の墨が波をたてるように黒い闇が揺れた。


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* **


「ジョン・レノンはやっぱ宇宙人なのか?」

マコちゃんはゲラゲラ笑いながら言った。

「ばーか。そんなわけねーだろ!
 あんなに素敵なヤツは人間に決まってる。
 いいか。
 人間ってのはな…凄いんだよ!」

「だったら宇宙人はどこにいるんだよ?」

「うーん。人間の中に目立たねえように紛れてる可能性はあるよなあ。
 でもよお。意外と目立ってたりしてな…ギャハハ」

「……うん?」

「たとえばさ」

「たとえば?」

「兎のかぶり物した床屋とか」

「そんなヤツいるかよ!」





The Beatles 「A Day in the Life」





春よこい


春風に誘われて表に出たマルが大声で口上を語り始めた。

『知らざあ言って聞かせやしょう
 春まだ浅い盛岡の、冷たい風ふく弥生には。
 冬の名残か春の走りか存じませんが、梅も土筆も見当たらねぇ。
 オリオン横丁お稲荷さんがコンと一鳴きする春の宵
 コップ酒で頬ぉ赤らめる居酒屋の、男どもにも一目置かれる、
 ししゃもで酒飲むサバトラ猫さ。
 南部鉄瓶沸かせしお湯はちょいとアチチな猫舌だ。
 右手傾げて春風招き、駘蕩たるかな大欠伸。
「にゃぁ」と一節唸れば梅もほころぶ春の歌。

 不来方のお城のベンチに寝ころびて空をみつめし十五のオス猫。
 
 うららかな春日を浴びて目を細め、塀に寝そべり毛づくろい。
 小首傾げて佇むさまは、哲学者か吟遊詩人か、はたまた風来坊か。
 弁天小僧マル之助たぁ俺がことだぁ』

大見得を切って「手招き」ポーズをきめるマル。
名調子でキメ科白を放った。

『はぁるよ こい はぁやく こいぃぃ!』

「いよっ!鈴ノ屋ぁっ!!」
「いよっ!マル大明神!」

タン・タン・タ・タ・タ・タ・タ・タ・ターッン!

『タラの芽の天麩羅がぁ あっ 喰いてえぇなあぁ!』



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iPhone 5
シューズの上から履くオーバーソックス
最高気温6℃で今年初のロードバイク外乗り。
やっぱ外乗りは気持ちイイ。けど風で耳が冷たい。次回は対策必要だな。


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X100S


***


ここからは。
ちょいと告知を。
いや露骨な宣伝です。

当「誰も寝てはならぬ屋」ブログにもイラストで参加してくれてる
M.K.女史@うずまき堂 http://uzumakido.com
女史はイラストも描くが、本業はフリーランスのライターというか…。
雑誌記事執筆、TV番組取材・構成・脚本書き…etc.何が何やらの仕事ぶり。
昭和風味のしっとり沁み沁み文章からテクノロジー系ネタも書く。
「はたしてイカ納豆にはワサビか洋芥子か?醤油かポン酢か?」で論文も書ける(おそらく)
という筆力の持ち主です。

しかして1番の特技は「世界を面白がり愛でること」

女史がもう一人の女性と新規事業をキックオフしました。
事業名(社名)は……
「SCOOP & PENCIL(スコップ&ペンシル社)」略してスコッペン http://scoppen.com


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『東京都写真美術館の「植田正治とジャック・アンリ・ラルティーグ展」にて採取。
 展覧会のサブタイトルは「写真であそぶ」でした。
 本気で遊んでいる人の作ったものには、遊び菌が付着している…そしてそれは伝染する…』
(「SCOOP & PENCIL」ホームページより)



東京写美の2人展の少し前に某所で「植田正治のつくりかた」展がありました。
綿密に作りこまれた写真で知られる植田正治。
精妙に巧妙に……布石あり仕掛けありそして主題が結実する写真。
彼はどのようにして写真をつくったのか。
そして写真家 植田正治はどのようにつくられたのか。
写真にも写真家にも……物語があった。

スコップ&ペンシル社とは……
『スコップでモノに宿る物語を掘り起こし、ペンシルでそれを伝える』


小生はスコッペンの「アイデア出し」特約社員ということですが…
実態はスコッペンの「応援団」です。

M.K.「オレは応援団だからとか言って、ライトスタンドでビール飲んでばっかじゃだめなんですよ!」
マル「こいつに期待しないほうがいい」
M.K.「期待してるって誰が言いいました?」
C_BoY「・・・・・・・・」


***


M市オリオン横丁の雑居ビルにある「S&P探偵事務所」は物語を調査する。
クライアントは丹精込めてつくった自慢のモノを持って訪ねてくる。
探偵はこの稼業を始める前から知っていた。
たたずまいが美しいモノには……
探偵がクライアントにかわって祝福してあげたい物語がつまっていることを。
調査報告書に書かれた物語はクライアントがまだ見ぬ人々の胸をもうつ。



THE BLUE HEARTS 「情熱の薔薇」





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